2018年もたくさん漫画を読んだので、僕のベスト作品を紹介します!、と思って記事を書いていたら、2019年が始まってしまいました。
ということで、あわてて2018年の記事の公開です。(この記事は2018年の12月に書いていました)
紹介基準は単行本なら5巻以内くらいで、個人的にヒットしたのを基準にしています。
錦糸町ナイトサバイブ(松田舞)
全員善人!!
「錦糸町ナイトサバイブ」は松田舞の作品。「コミックDAYS」で連載中。
この漫画は、どのようななのかというと意外にも説明が難しい。
あらすじを言えば、キャバ嬢を目指して秋田から上京してきた西本小夏(20)が、その子供みたいな容姿のせいでキャバクラの面接が受からない。はては借金300万円を負ってしまい、仕方なく知り合いの歯医者で働く。といった感じ。
なぜこの漫画の説明が難しいかというと、ストーリーのゴールがどこを目指しているのかがわからないのです。借金を返す、キャバ嬢になるという目的はあるけれど、実際の作中では主人公のコミカルな日常を描くのが主だからです。
では、この漫画の魅力は何なのか。シンプルに楽しい。錦糸町のダメな空気感をコミカルに描いて、たまにいい話。
悪人が一人もでてこないし、むしろ全員善人。
絵もあっさり目で可愛いし、読んでて楽しくなります。安心して読める。
下記のインタビューで、担当編集者が作者 松田舞のことを「石黒正数氏と東村アキコ氏のハイブリッド」と評しているのですが、個人的にも納得。
作者の松田舞さんは他に何書いてるのかな?と探したら初連載みたいですね。自分の中で隔週火曜の楽しみになってるので、ぜひとも続いてほしい (ぼくはイイねボタンをMAX連打してる)
既刊1巻。
作者のインタビュー記事はこちら
映画大好きポンポさん2(杉谷庄吾【人間プラモ】)
全クリエイター必読!!
2017年にいきなり現れて話題を集めた「映画大好きポンポさん」。物語として完結していたので、続編はないと思いきや、いきなり2巻が発表されました。
2巻のあとがきを読むと、続編を書く気がなかったけど、多数の出版社からのオファーがあったようです。
そのせいか、作者の心境をシニカルに反映した1ページ目。いかすぜ。自分の状況をヒントに話を作ったのかな。
ポンポさんは普通にシナリオの作り方など、体系的に学べるところもある。
理論的な話は、お話に説得力を追加しますね。おもしろい。
この作者は、これが伏線だろうなと思わせておいて、最後にそれを少しズラして物語を終わらせるというのがうまいですね。
気持ちがよいカタルシスを生みます。
1巻と同様に内容は映画制作ですが、ものづくりに関わる全ての人に読んで欲しい名作。全各巻完結。
また、今は作者自身によるスピンアウトの「映画大好きフランちゃん NYALLYWOOD STUDIOS SERIES」も連載中。
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月曜日の友達(阿部共実)
マンガ史的傑作!
阿部共実は、「空が灰色だから」「ちーちゃんはちょっと足りない」などなど評価が高い作品を生み続けている作家です。
しかし、個人的には面白いという思う反面、そこまでハマれなかった作家なのです。
この「月曜日の友達」には心の底から感動しました。阿部共実の切れ味は、今までは鋭いナイフだったとすれば、この漫画では、刃物でなくても心は切れるという境地に。うん、何を言ってるかわからない。
ストーリーの説明って、だいたいが自分の感じたことが伝えられないのでしたくないから難しいですね。
台詞まわしには「詩」として読めるクオリティ。擬音をほぼ全編使わない構成。
語彙のない自分には「美しいマンガだから読んで」としか言えないのです。
何度となく見返していますが、素晴らしく美しいですね。捨てコマがほんとない。
全2巻完結。
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インタビューもぜひ読んでください。
【インタビュー】阿部共実『月曜日の友達』ネームを完成させるまでに1年! 描きたかった思春期の中学生男女と“大友克洋的SF”、そして憧れの“自転車2人乗り”
ニュクスの角灯 (高浜寛)
高浜寛という才能にいつまで日本は注目しないのか。
日本より先に海外 (フランスで主に) で評価される漫画家。2018年の文化庁メディア芸術祭優秀賞受賞作。
1878年の長崎でのお話。
主人公・美世は、学がないから文字も読めない。触った物の未来・過去がわかるのだが、家族からも気味悪く思われている。
そんな中、偶然に働くことができた輸入雑貨での明治浪漫の人間ドラマ。
文字を教えてもらったら実は英語だった(本人は日本語と思っていた)という展開など楽しいです。
高浜寛の絵はもともと素晴らしいですが、このニュクスの角灯では、明治浪漫の服装や雰囲気が素敵。
単行本では、話と話の間に描かれるさしページも素敵です。
ちなみに、高浜寛は僕と同郷の熊本県出身。熊本よ。取り上げておくれ。
既刊5巻。
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実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。(ペス山ポピー)
マイノリティ•エッセイの最高峰
エッセイ漫画は好きでよく読むのですが、エッセイ漫画は難しい。
自分のどこを切り取るかで話の良し悪しが大きく変わるし、ちょっと自分をよく見せようとすると、すぐつまらなくなります。しかし、人間は悲しいかな、自分をよく見せたいし、それでつまらなくなってる作品がどれだけあるか。
さて、本作「実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。」は、隠すどころか、よくぞここまでオープンに描いたと思わせる作品です。
そもそも、オープンに描きたくても、そんな簡単には描けないから、表現力がすごい。
作者は、物心ついたときから、マゾヒストでセクシャルマイノリティ。そんな彼女が、はじめて初恋をしたときの話です。
初恋に繋がるまでの、出会い系などを使って人に会うのですが…。
かなりシンプル系の絵柄ですが、激しめ表現・暴力シーンが多めです。映画ならR18とかになりそう。
一見、自分の知る初恋とは違う。いや、違う。ある意味で同じなのだ。
僕は2巻は涙なしには読めませんでした。去年で一番泣いたマンガです。
ちなみに、単行本の表紙が2016年の「さびしすぎてレズ風俗に行きました」と明らかに同じターゲット層を狙ってるのがわかります。
どっちが良いという話ではないのですが、自分は両方好きなので読者ターゲット層はあっていると思います。
全2巻完結。
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はっぴぃエンド。(有田イマリ)
これがなぜ話題にならない?!
はじめに予備知識もなく読んだので、かわいい絵柄の日常系漫画ね。と思っていたらまさかの展開。
内容はゴリゴリの和風ホラー・SFサスペンス。
1巻の初めの方は、某有名作品の影響というか、ちょっとそのままじゃないかって感じですが、2巻と進むにつれて作り込んだストーリー展開がグイグイと引き込んできます。たまに突っ込みたくなる所あるけど、気にしてたら楽しめない。
こんな感じの、のほほんマンガ…と思いきや…。
てっきり、考察サイトなどが立ち上がっているものと思いきや、検索したらまったくない。
話題になる要素がたくさんあり、それに見合う面白さがあるので、2巻くらいのときにうまくネットで話題になれば人気が炸裂したんじゃないだろうかと、惜しまれる。
いや、ここからの大どんでん返しがいけるか!?もっと売れると思うけどなー。アニメ化があいそう。
ストーリーはもう出来上がっているのでしょうね。テンポがいいので、おそらく6, 7巻くらいで完結しそうです。
既刊4巻。
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ハコヅメ(泰三子)
king of 良作品
週刊モーニングで連載中。毎週の楽しみ。
元婦警が描く警察コメディ。
実際に働いていないと描けないエピソードが盛りだくさん。それらを笑いに変えるセリフまわしが面白いです。
警察官の内情をおもしろおかしくディスるディスる。
ここだけ見てもわかりませんが「冤罪が出るぞ」で妻がヒーヒー笑ってました。細かいツッコミが面白い。
ハコヅメでは、警察官の過労死は多いなど、さらっと語られる話もびっくりします。
これ読んでからお巡りさんに優しくしようと思いました。
基本ギャク漫画ですが、ポツポツと感動する話もうまい。作者のインタビューも読む価値があります。
インタビュー: 「警察は“しょうもない人”が頑張る仕事です」
既刊4巻。
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連載一話目は、読んだときに「これは完璧な連載一話目だな」と思いました。
以上!6作品の紹介でした。さて2019年はどんな作品と出会えるのでしょうか。