Qドラムとは
開発途上地域の人は水を手に入れる為に、水源まで何キロも歩きます。
そして、水をタンクに入れて頭の上に乗せて水を運びます。
写真などでよく見る光景ですね。
この方法だと、
1. 重い、きつい、大変
2. 首や背骨に負担がかかって障害を引き起こす
という問題があります。
そこで、発明されたのがQドラムです。
Qドラムはドーナッツ型のタンクで出来ており、中心に紐をくぐらせて引っぱり、水を転がして運ぶのです。
名前の由来もQドラムが横から見た形が「Q」だった所からきています。
「残りの90%のためのデザイン展」に展示されたのをきっかけに注目を集め、
そのシンプルな解決方法に
「何故、今まで誰も思いつかなかったんだ?」
と賞賛されました。
僕も初めてニュース記事を読んだときは衝撃を受けました。
さて、その世界が賞賛した発明品ですが、
現在、Qドラムはあまり使われていません。
Qドラムが使われなかった理由
Qドラムが使われなかった理由はコストです。
Qドラムは南アフリカの土木技師と建築家のヘンドリクス兄弟が考案しました。
ヘンドリクス兄弟の話では
・真ん中の穴を作ること
・毎日使われても問題のない強度の実現
が想像以上に困難でコストが上がってしまったそうです。
そして出来たQドラムの販売価格は65ドル。
さらに輸送費や関税などかかります。
また、輸送費がQドラム自体の費用を上回りまってしまうこともあり、
時に100ドル以上になることもあるそうです。
残念ながら最も必要とする人たちにとって高価すぎて手が届かないのです。
ニーズに合ったデザインの考え方
昨今「プロダクトをどのように作れば売れるのか?」を考える時に
「これを使ったら自分のライフスタイルがどのように変わるのか?時間が有効活用できるのか?」
これをエンドユーザーに想像させる事が重要と言われます。
AppleのiPadは近年これに最も成功したプロダクトと言えます。
しかし、これは先進国に限る話なのでしょう。
「数百万人の人々の貧困からの救出」をミッションにシンプルなツールを開発・普及させているKickStart(キックスタート)という組織があります。
KickStartがプロダクトを開発する時の原則の一つに
「貧困層が最も必要としているのは金を稼ぐ方法であり、
開発したプロダクトを使うことで利益を出すことができなければいけない。」
といったものがあります。
Qドラムはライフスタイルは変える事ができるが、使うことによってお金を生む訳ではなかったのでしょう。
KickStartのプロダクト”money maker pump”。灌漑で使われ農業の収入をアップさせる
勿論、日々のライフスタイルが楽になるという事は素晴らしいのですが、現実的に見合った価格帯ではないのですね。
例えば、ライフスタイルが楽になるといって全自動ドラム式洗濯機に100万も出せるのか?という話でしょうか。
しかし、Qドラムのアイデアは素晴らしいですよね。
本当に何で誰も思いつかなかったんでしょうね…。
ちなみに、Qドラムは寄付などを受けながら少しずつ普及はしています。
Q DRUM >
↓Qドラムも載っているこの本、面白いです。こういった開発途上国の問題を解決するツールの話などが載ってます。
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コメント
コメント一覧 (2件)
示唆に富んだお話し、感謝です。Qドラム、知りませんでした。
なんか「富める側の大いなるプロダクトアウト」
って。感じですね。
ペットボトルのリサイクルとか
台湾の漁具業者かなんか
上手いこといかんもんかいな、と悩ましい。
>なんか「富める側の大いなるプロダクトアウト」
なるほど。なるほど。
しかし、問題は悩ましいのですが、こういったことを考える事は楽しいのです。